子どもの把握と理解 高山静子

子どもの把握と理解

~保育の専門性に基づいて

高山静子
B5判 168ページ
定価 2,200円+税
発売日 2024年9月3日
ISBN:978-4-910467-13-9

内容紹介

本書は、子どもを“もっと理解したい”と願う保育者と学生のための本です。

保育は「子どもの理解」から始まります。本書は、日常の保育のなかで子どもと関わりながら子どもを理解する方法について解説しています。また子どもに影響を与える要因について、脳科学や生理学等、幅広い学問分野と実践から最新の知見を紹介しています。 本書を読んだ保育者は、子どもの行動の意味づけや、子どもへのまなざしが変わり、援助の幅が広がることでしょう。

なお、本書の内容は、保育士養成課程の「子どもの理解と援助」、幼稚園教諭養成課程の「幼児理解の理論及び方法」のモデルシラバスに準拠しています。

★本書の全体像
第1部 子どもの把握と理解とは何か、視点と方法を学ぶ
第2部 子どもの感情・行動・認知に影響を与える主な要因を学ぶ
(睡眠/食べ物/化学物質/運動と外遊び/映像メディア/個による違い/生得的・後天的な障害/脳と遺伝子/大人の関わりと保育環境/乳幼児期独自の発達の姿)
第3部 把握と理解に基づく保育と保護者支援への展開を学ぶ(障害のある子ども/日本語を母語としない子ども/映像メディアに強い影響を受けた子ども)
*学びを深めるための6つの演習課題

目次

第1部 子どもの把握と理解とは

第1章 子どもの把握と理解とは何か

1 把握し理解することの重要性
2 把握と理解の違い
3 把握することでよりよい理解ができる
4 把握によって適切な援助が見つけやすくなる
5 子どもを把握し理解するプロセス
6 子どもの把握に影響を与える前提条件
▶演習1 現在の「子どもを把握する力」を確認する

第2章 保育者が子どもを把握し理解する視点

1 保育者は総合的に把握する
2 子どもを取り巻く環境の視点
3 子どもの内側を把握する視点
4 心理・生理・器質(形質)に変化をもたらす主な要因
5 保育者は子どもとその環境を総合的に把握する
▶演習2 第1部の読み合わせを行い、互いの意見を聴き合う

第3章 保育者が子どもを把握し理解する方法

1 遊びや生活のなかで子どもを把握する方法
2 子どもと人や環境の関係を把握する方法
3 子どもの言葉を把握する方法
4 子どもの絵を把握する方法
5 家庭の生活を把握する方法
6 把握した情報をもとにして理解に至るプロセス
▶演習3 チームでお互いの情報を共有し理解を深める

第2部 子どもの感情・行動・認知に影響を与える主な要因

第4章 睡眠

1 自分で睡眠時間を調整できない乳幼児
2 機嫌よく起きて、日中元気に活動するための睡眠時間
3 睡眠不足の影響
4 睡眠と自律神経の働き
5 睡眠不足による受け身の生活習慣

第5章 食べ物

1 食欲や好き嫌いの個別性
2 栄養状態が子どもの感情や行動等に与える影響
3 低血糖状態が子どもの感情や行動等に与える影響
4 食品アレルギーが感情や行動等に与える影響

第6章 化学物質

1 化学物質(自然・人工)の益と害
2 化学物質との接触の影響
3 土壌・水・大気の汚染
4 抗生物質、消毒薬等の薬
5 細菌やウイルスと共存する身体

第7章 運動と外遊び

1 運動は脳を育み、知性と自我の形成を育む
2 乳幼児期の運動が奪われる要因
3 運動不足が脳の発達へ与える影響
4 乳幼児期の発達に合った運動
5 外遊びで自律神経を育む

第8章 映像メディア

1 乳幼児期の映像メディア視聴の現状
2 乳児期の映像メディア視聴の危険性
3 0.1.2歳の長時間視聴の問題
4 映像刺激による脳疲労
5 映像メディアの内容による負の行動学習
6 ゲーム障害という新しい疾病

第9章 個による違い

1 気質の違い
2 刺激への敏感さ・変化への志向性の違い
3 興味・関心の違い
4 脳の機能や活性度の違い
5 人格心理学における性格の捉え方

第10章 生得的・後天的な障害

1 周産期から乳幼児期の障害
2 後天的な障害
3 障害による特性の理解
4 発達障害(神経発達障害群)
5 治療、療育の場での五つのアプローチ

第11章 脳と遺伝子

1 脳の概要
2 脳が著しく発達し変化しやすい乳幼児期
3 乳幼児期の脳の発達は目に見える
4 脳は変化する

第12章 大人の関わりと保育環境

1 人への信頼を築くことがすべての発達の始まり
2 乳幼児の感情と行動等は保育者のまなざしに影響を受ける
3 乳幼児の感情と行動等は保育環境で変化する
4 乳幼児の発達は保育環境に影響を受ける
5 園と家庭による子どもへの教育虐待
6 虐待の脳への影響

第13章 乳幼児期独自の発達の姿

1 乳幼児の理解には発達の専門知識が欠かせない
2 発達をステージとしておおまかに捉える
3 発達を援助する原則を知る
4 発達を細やかに理解するために
▶演習4 保護者に誤解されやすい乳幼児期の行動を解説する

第14章 知識を実践へ活用する際の留意点

1 第2部の知見について
2 妥当な根拠を論理的に活用する
3 これまでにない新しい課題が生じたとき 
4 知識は子どもの幸福のために使う
▶演習5 子どもの姿の背景をできるだけ多く想定する

第3部 把握と理解に基づく保育と保護者支援への展開

第15章 子どもの把握と理解に基づく展開の原則

1 指針や要領に示される展開の原則
2 子どもを信じる
3 子どもの力を引き出す
4 自分の理解を子どもに確かめる
5 葛藤やつまづきを大切にする

第16章 子どもの育ちを保育で支える

1 保育者は子どもの育ちと幸福を総合的に援助する
2 保育者は「育む」方法を中心とする
3 多様な展開方法の学び方

第17章 課題を保育へと展開する

1 課題を保育へと展開する方法
2 把握と理解から保育の展開を考える
3 実践は試行錯誤を繰り返す
4 保育への展開例:発達の障害がある子ども、発達の偏りが大きい子ども
5 保育への展開例:日本語を母語としない子ども
6 保育への展開例:映像メディアに強い影響を受けた子ども
▶演習6 子どもの把握と理解に基づく保育の展開

第18章 家庭や地域と共に子どもの育ちを支える

1 自分の信念が妥当か確認する
2 保護者と情報を共有する
3 親が親として育つことを支える
4 伝わりやすいアドバイスの方法をとる
5 家庭と一緒に子どもの育ちを支える
6 地域の資源の活用と連携

著者紹介

高山静子(タカヤマ シズコ)

東洋大学教授。保育と子育て支援の現場を経験し、平成20年より保育者の養成と研究に専念。平成25年4月より東洋大学。教育学博士(九州大学大学院)。研究テーマは、保育者の専門性とその獲得過程。著書に『改訂 環境構成の理論と実践〜保育の専門性に基づいて』『改訂 保育者の関わりの理論と実践〜保育の専門性に基づいて』『保育内容 5領域の展開〜保育の専門性に基づいて』『子育て支援の環境づくり』『学びを支える保育環境づくり〜幼稚園・保育園・認定こども園の環境構成』『子育て支援ひだまり通信〜遊びとしつけの上手なコツ』(いずれも単著)、『育つ・つながる子育て支援〜具体的な技術・態度を身につける32のリスト』(共著)、『3000万語の格差』(解説)など。

本の注文について